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院長インタビュー
難病の患者様に寄り添い
「信頼関係」を大切にする医療
まずは、クリニックについて教えてください
当クリニックは脳神経内科クリニックで、パーキンソン病をはじめとする神経疾患の専門的な診療を行っています。40年以上の神経内科専門医としての経験と知識を活かし、患者様お一人おひとりに最適な医療を提供することを心がけています。
当クリニックの大きな特徴として、パーキンソン病特化型・住宅型有料老人ホーム「PDレジデンス倉敷」の併設が挙げられます。PDレジデンス倉敷は当ビルの2~5階にあり、毎日リハビリテーションが行われています。これにより患者様への継続的な医療とケアを実現しています。
もちろん頭痛やめまいなどの一般的な症状についても、専門的な立場から丁寧に診察・治療いたします。
クリニック開設のきっかけは?
私は2000年から倉敷紀念病院に勤務し、多くのパーキンソン病患者様を診てきました。しかし病院では治療期間に限りがあり、患者様を長期的に支えることが難しいという課題がありました。患者様に最期まで寄り添い、継続的な医療とケアを提供したいという思いから、2024年10月に倉敷脳神経内科クリニックを開設しました。
パーキンソン病をはじめとする神経変性疾患は進行性の難病で、治癒は難しいと言われています。しかし適切な治療とリハビリテーション、そしてきめ細やかなサポートによって、患者様のQOL(生活の質)を改善することは可能です。当クリニックではこうした考えのもと、日々の診療に取り組んでいます。
クリニックの診療理念は?
「分かりやすい説明」と「患者様との信頼関係」を大切にすることです。
神経変性疾患は複雑で、患者様やご家族にとって理解が難しいものです。しかし病気について正しく理解することは、治療への積極的な参加やモチベーションに繋がります。なので難しい専門用語を避け、分かりやすい言葉で丁寧に説明することを心がけています。
特に重視しているのは初診時の丁寧な説明、いわゆる「ファースト・エンカウンター」です。これは医師と患者様が初めて出会う大切な機会で、ここで信頼関係の基礎が築かれると考えています。
初診では少なくとも30分以上の時間をかけて、患者様やご家族と向き合うようにしています。病気の説明だけではなく、これから私たちが「パーキンソン病と共に戦うパートナー」として歩んでいくのだということをお伝えします。
その上で、日々の診療では患者様と一緒に治療目標を立てて、お互いができることを確認し合います。そして次回の診察でそれぞれが頑張った成果を一緒に喜び、改善点を見出しながら新たな目標に向かって歩んでいきます。
「PDレジデンス倉敷」を併設
常に患者様に寄り添います
パーキンソン病の治療で大切にしていることは?
パーキンソン病の治療では、脳内のドーパミンという物質が不足することで起こる運動症状をコントロールすることが目的となります。しかしドーパミン補充療法には時間と共に効果が減弱し、副作用が出やすくなるという問題があるのです。
そこで当クリニックでは製剤に加えて、非ドーパミン系の薬なども副作用に細心の注意を払いながら患者様の状態に合わせた治療を行っています。薬の種類や量、飲み方などを工夫することで、患者様のQOL(生活の質)を高めることを目指しています。
また、早期からのリハビリテーションも非常に重要です。運動療法などにより体の固さや動作のスムーズさを改善することで、日常生活の自立度を高めることが可能になります。クリニック内、またPDレジデンス倉敷内に広々としたリハビリスペースがあり、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの専門スタッフによるオーダーメイドのリハビリプログラムを提供しております。
他の医療機関や地域連携についてはいかがでしょうか?
当院では神経内科専門医である私が全身管理の司令塔となり、各診療科と綿密に連携を取ることで患者様を多角的にサポートできる体制を整えています。
加えてパーキンソン病の治療では、医師だけでなく、様々な医療スタッフとの協働が欠かせません。看護師、リハビリスタッフ、薬剤師、管理栄養士、ソーシャルワーカーなど、多職種が一丸となってチーム医療を実践することが大切だと考えています。
特に、服薬指導や副作用モニタリングにおける薬剤師の役割は重要です。当院では薬剤師と協力し、患者様やご家族に分かりやすい服薬指導を行うための工夫を凝らしています。例えば薬の飲み方を説明する動画を作成し、地域の薬局にも配布するなどの取り組みを行っています。
こうした「医療連携」と「チーム医療」を大切にしながら、これからもパーキンソン病患者様に寄り添う医療を実践していきたいと思います。
PDレジデンス倉敷の特徴は?
PDレジデンス倉敷は、「患者様のご自宅に近い環境」であることが特徴です。全室個室・トイレ付きで、プライバシーが守られた空間で生活を送ることができます。また施設内の厨房で作られる食事は、患者様の嚥下機能や栄養状態に合わせて提供されます。美味しく安全に食べられる食事は、患者様のQOL向上に欠かせない要素の1つです。
そしてPDレジデンス倉敷のもう1つの大きな特徴が、「専門性の高いリハビリが継続して受けられる」ことです。「動くことが苦手になる病気だからこそ、できる限り体を動かし続けることが大切」というコンセプトのもと、リハビリ専門スタッフが運動療法などを実施しています。
そして私が入居者様を往診しますので、継続的な診察とリハビリ、そして介護スタッフとの情報共有を通して最善のケアが提供できる体制となっています。
こういった施設は全国的にも珍しい?
同じタイプの施設としては、東京や大阪などに「PDハウス」と呼ばれるものがありますが、中四国では初の試みとなります。
PDレジデンス倉敷は「個室で、トイレが完備された居室」「施設内での食事提供」「専門的なリハビリが継続的に受けられる環境」など、ハードとソフトの両面で他の施設にはない特徴を持っています。「ただ生活の場を提供する」だけではなく、「医療の質」と「生活の質」、両方を高めるための工夫を凝らした施設と言えます。
私たちが目指すのは
「患者様と共に歩む医療」
院長が医師を目指したきっかけは?
私が神経内科医を目指したきっかけは、父の影響が大きいですね。私は川崎医科大学の2期生で、神経内科学教室に入局した最初の卒業生でした。当時は消化器内科や循環器内科などへの進路が主流で、神経内科はマイナーな選択肢でした。
しかし尊敬する恩師である神経内科:寺尾 章教授の影響を受けて、神経内科の面白さに惹かれていきました。父は開業医で「もっとメジャーな科を選びなさい」と言われましたが、私が大学2年生の時、父が急に呼吸困難で倒れたため恩師に診ていただいたのですが、意識が戻った時に筆談で恩師に「息子をよろしく」と私の進路を応援してくれたのです。
父の想いと恩師の後押しがあったからこそ、私は神経内科医の道を選ぶことができました。それは私にとって、神経内科医として生きる原点となる出来事でした。
専門分野について教えてください
私はパーキンソン病を中心とした神経変性疾患の診療に力を入れています。またてんかんの治療にも注力していて、「BAFME(良性成人型家族性ミオクローヌスてんかん)」は私が1991年に世界で初めて報告した疾患で、現在も最先端の研究が進められています。
また物忘れや認知症の診療も行っており、近隣のクリニックと連携しながら患者様やご家族に寄り添った医療を提供しています。加えて、セカンドオピニオンにも積極的に対応しております。私の専門的知識と経験を活かし、患者様やご家族の疑問や不安に真摯に向き合い、納得のいく医療を提供できるように努めています。
最後に、患者様へメッセージをお願いします
私たちが目指すのは、「患者様と共に歩む医療」です。診断や治療はもちろん大切ですが、それ以上に患者様との信頼関係を築き、寄り添うことが重要だと考えています。
神経変性疾患と言われる難病も、適切な治療とケア、リハビリによって前向きに向き合っていくことができます。当クリニックではPDレジデンス倉敷も併設し、患者様の生活を24時間365日サポートする体制を整えています。
診察室で、リハビリの現場で、そして療養の場で、私たちは常に患者様のそばにいます。どんな小さな症状の変化も見逃さず、お一人おひとりに合わせた最善の医療を提供することをお約束します。