パーキンソン病・パーキンソン症候群

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パーキンソン症候群とは

パーキンソン症候群とは

パーキンソン症候群は、パーキンソン病と類似した運動症状(安静時振戦、筋強剛、寡動、姿勢反射障害)が生じる一連の疾患群の総称です。パーキンソン症候群には、パーキンソン病以外にも、いくつかの神経変性疾患や二次性の原因によって引き起こされる病態が含まれます。

パーキンソン症候群に含まれる主な疾患

パーキンソン症候群に含まれる主な疾患は以下の通りです。

神経変性疾患
多系統萎縮症

ドーパミン欠乏に加えて、自律神経障害を伴う。立ちくらみや排尿障害などが特徴的。

進行性核上性麻痺

脳幹の神経細胞が減少し、すくみ足や後方への転倒、眼球運動障害、認知機能低下などを呈する。

大脳皮質基底核変性症

パーキンソン病の症状と大脳皮質の症状を併せ持ち、片側の運動障害や失行などが特徴的。

二次性の原因によるもの
脳血管障害(脳卒中)

脳梗塞や脳出血などにより、大脳基底核が損傷されることで生じる。

薬剤性

ドーパミン受容体を遮断する抗精神病薬などの長期使用により引き起こされる。

神経内科専門医が的確に診断・治療

これらの疾患は、症状がパーキンソン病と類似しているため、鑑別診断が重要となります。各疾患では、症状の現れ方や進行速度、治療反応性などに違いがあり、適切な診断に基づいた治療方針の決定が求められます。

倉敷脳神経内科クリニックでは、豊富な経験を持つ神経内科専門医が、詳細な問診や神経学的診察、画像検査などを駆使してパーキンソン症候群の正確な診断を行います。患者様お一人おひとりの状態に合わせた最適な治療計画を立案し、きめ細やかなフォローアップを行って参ります。

パーキンソン病とは

パーキンソン病は、パーキンソン症候群の中で最も頻度が高い疾患で、中脳黒質のドーパミン産生細胞が減少することで発症します。典型的な症状は「安静時振戦(ふるえ)」「筋強剛(全身の筋肉のこわばり)」「寡動(動作が緩慢になる)」「姿勢反射障害(姿勢が不安定になる)」の4大症状です。症状は緩徐に進行し、発症から10~20年の経過で日常生活動作(ADL)が低下していきます。

パーキンソン病の検査・診断

パーキンソン病の診断は、主に臨床症状と神経学的所見に基づいて行われます。神経内科専門医が詳細な問診や身体診察、神経学的検査を行い、パーキンソン病に特徴的な症状や所見を確認します。

画像検査も診断の補助として用いられます。MRIでは脳の構造的な異常や、パーキンソン病以外の原因(脳腫瘍や脳血管障害など)の有無を確認します。DAT-SPECTは、線条体のドパミントランスポーターの密度を測定する核医学検査で、パーキンソン病では線条体のドパミントランスポーター密度が低下することが知られています。この検査はパーキンソン病と本態性振戦など、他の疾患との鑑別に有用です。

また、パーキンソン病の一部は遺伝性であることが知られています。若年発症のパーキンソン病や、家族歴がある場合には遺伝子検査を行うこともあります。

しかし現時点ではパーキンソン病に特異的なバイオマーカーは確立されていないため、臨床症状と神経学的所見が診断の中心となります。当クリニックでは豊富な経験を持つ神経内科専門医が、最新のエビデンスに基づいて慎重かつ正確な診断を行って参ります。

パーキンソン病の治療

パーキンソン病の治療は、運動症状の改善とADL(日常生活動作)の維持を目的に行われます。治療の中心は薬物療法で、ドーパミン補充療法と非ドーパミン系の薬物療法があります。

ドーパミン補充療法

ドーパミン補充療法は、レボドパ製剤(L-ドパ)やドパミンアゴニストなどの薬を用いて脳内のドーパミン不足を補う治療方法です。

L-ドパ

L-ドパは、パーキンソン病治療の中心的な薬剤です。体内に取り込まれた後、脳内でドーパミンに変換され、不足しているドーパミンを補充します。効果が高い反面、長期使用により ウェアリング・オフ(wearing-off)現象やジスキネジアなどの副作用が出現することがあります。

ドパミンアゴニスト

ドパミンアゴニストは、ドーパミン受容体を直接刺激する薬剤です。L-ドパのようにドーパミンに変換される必要がないため、L-ドパと比べると効果の発現がゆっくりですが、持続時間が長いという特徴があります。治療効果はL-ドパよりやや弱いものの、1日中穏やかで安定した効果が得られます。近年は内服薬に加えて注射薬や貼付薬も登場し、治療の選択肢が広がっています。

考えられる副作用
ウェアリング・オフ(wearing-off)現象

L-ドパの効果が切れる前に、パーキンソン病の運動症状が再出現または悪化する現象。病気の進行と共に、1回の服用で効果が得られる時間が徐々に短くなることで起こる。

ジスキネジア

L-ドパの長期使用により生じる不随意運動。主に顔、舌、頸部、手足などに不規則で不随意な動きが現れる。レボドパ製剤の血中濃度がピークに達した時や、効果が現れ始めた時と切れ始めた時に起こることが多い。

非ドーパミン系の薬物療法

ドーパミン欠乏による影響を間接的に治療する薬剤です。

非ドーパミン系の薬物を中心に使用

当クリニックでは、パーキンソン病患者様の平均年齢が高齢であることを考慮し、比較的副作用の少ない非ドーパミン系の薬物も積極的に処方しています。特に高齢者では副作用のリスクが高いため、ゆっくりと慎重に薬剤の調整を行うことを心がけています。

リハビリテーション

薬物療法と並んで、リハビリテーションも重要な治療方法です。運動療法などにより、姿勢・バランス機能の改善、転倒予防、ADLの維持などをはかります。当クリニックでは、パーキンソン病に特化したリハビリテーションを提供できる体制を整えています。

パーキンソン病の研究と今後の展望

パーキンソン病の病因解明と新たな治療法の開発は、現在も活発に行われています。遺伝子研究や再生医療、脳深部刺激療法などの分野で進歩が見られ、将来的には根本的な治療方法の確立が期待されています。

パーキンソン病治療の最前線

パーキンソン病の治療は、この20年で大きな進歩を遂げました。生命予後に関しては、治療方法の進歩により、ほぼ健常者と変わらないレベルまで改善してきています。以前は誤嚥性肺炎や尿路感染症などの合併症で亡くなる方が多くいましたが、主治医が患者様の些細な変化にも気づき、早期に適切な治療を行うことで、多くの合併症を予防できるようになりました。

運動症状の治療では、ドーパミン補充療法に加えて、非ドーパミン系薬剤の選択肢が増えてきました。ウェアリング・オフ(wearing-off)現象やジスキネジアなど、ドーパミン補充療法特有の副作用に悩まされる患者様も少なくありませんが、非ドーパミン系薬剤を上手に組み合わせることで、運動症状と副作用のバランスを取りながらQOL(生活の質)を維持していくことが可能になってきています。

パーキンソン病は長い付き合いになる病気です。私たちは患者様とご家族に寄り添い、その人らしい生活を送れるようサポートいたします。治療や療養生活に関するご不安やご質問がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

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